改葬にかかる費用

改葬手続きにかかる費用

市区町村役場で発行してもらう「改葬許可証」の発行手数料は、無料です。しかし、「改葬許可証」の発行には、現在の墓地の管理者が発行する「埋蔵証明書」を添付するか、「改葬許可申請書」に遺骨が埋蔵されているという「埋蔵証明」をもらわなければなりません。「改葬許可証」は、そのお墓に埋蔵されている、身元のわかる遺体1体につき1枚必要で、たとえば5体分であれば「改葬許可申書」および「埋蔵証明(書)」も5枚必要になってきます。

「埋蔵証明(書)」の手数料は、300円から1000円ぐらいが一般的なようです。

改葬先の墓地に発行してもらう「受入証明書」の料金は、お墓の購入代金に含まれていることもあります。発行手数料がかかる場合も料金はケースバイケースで、民営墓地の場合、1000円ぐらいです。自治体により金額は異なります。 「永代使用許可書」とは、お墓を購入したときの契約書のことです。なお「使用許可書」を紛失した場合に再発行する手数料は1000円前後です。こちらも自治体により金額は異なります。

現在のお墓をさら地にする費用

石材店には、カロートから遺骨を取り出す、現在のお墓の墓石を供養・処分し、さら地に戻す、などの作業を依頼しますが、この費用もかかります。

カロートから遺骨を取り出すには1体4万円ぐらいかかります。また墓石の処分代も含めて、墓地をさら地に戻すには、1㎡あたり10万~12万円ほどかかるので、1坪だと33万~40万円ほどかかることになります。

現在のお墓の棹石を改葬先で使う場合は、それを運ぶ運賃がさらにかかります。棹石の移動にかかる費用は、棹石の大きさや状態、墓地の状態によって異なりますが、一例としては、群馬から東京まで150㎞運んだ場合、約20万円ほどかかるようです。正式に依頼する前に、まずは見積もりを出してもらうと良いでしょう。

なお、現在のお墓をさら地にして返還しても、原則として永代使用料は戻ってきません。

閉眼供養のお布施は?

閉眼供養のお布施はあくまでも「志」なので、とくに金額に決まりはありません。目安は、これまでお世話になった菩提寺なら10~15万円、公営墓地や民営墓地なら3~5万円でしょう。なお、改葬先での納骨法要のお布施、改葬先のお墓が新しい場合は開眼供養のお布施も必要になります。石材店に相談するとよいですが、目安は3~5万円です。

その他の費用

改葬には、そのほかにも、郷里へ足を運ぶ交通費、宿泊費、菩提寺や親戚などへのあいさつのためのおみやげ代などがかかります。

仮に新しくお墓を建てる費用が250万円だとすると、これを含めて改葬するには、少なくとも300~350万円はかかるという計算になります。新しい菩提寺の檀家になり戒名(法名)を授かる場合は、その費用も見込んでおく必要があります。

墓地の管理者が改葬を行うことも

改葬をするのは、墓地の使用者だけではありません。お墓が無縁墓になった場合には、墓地の管理者が改葬を行い、遺骨は墓地内にある無縁供養塔や永代塚などに合葬されます。改葬にあたっては、次のような手続きをとります。

①その墓地の使用者や縁故者などに申し出をするよう、官報に掲載したりお墓に立て札を立てて呼びかける。

②1年経過しても申し出る者がいなければ、墓地管理者は必要書類(官報の写しと立て札の写真・墓地の写真・その他)を市区町村長に提出する。

こうした手続きを経て無縁墓と認定されたあと、改葬されます。

海外のお墓に改葬できるの?

日本国内においての改葬手続きとほとんど同じです。現在の墓地の管理者に遺骨が埋蔵されているという「埋葬(埋蔵)証明」をしてもらい、市区町村役所の戸籍課か住民課に申請して、「改葬許可証」をもらいます。このとき、場合によっては移転先(海外)の墓地の「受入証明書を請求されることもあるので、準備しておきます。そのためにも海外で墓地をさがしておく必要があるでしょう。準備がととのったら法要を行い、遺骨を取り出します。翻訳した改葬許可証があれば、遺骨を日本国外に持ち出すことができます。

アメリカの場合、仏教寺院があるのでそうした寺院を選べば、改葬も違和感なく行えます。あなたが継承者になっている日本の菩提寺のお墓は、結局継承者がいなくなるので、10~20年分の管理料に相当する永代供養料をお寺に支払い、永代供養をお願いするとよいでしょう。

2つの家墓をまとめて両家墓にしたい

両家ともにお墓がある場合

少子化によって、お墓を継ぐ人が減ってくると、1世帯で2つのお墓を継承することも多くなります。祭祀費の負担はかなり大きいものになるので、ひとつにまとめるケースも増えてくるでしょう。同じ仏教でも両家の宗派が違う場合はいろいろ問題が生じてきます。まず、受け入れ側のお寺で、宗派の違う仏様を許可するかどうか。許可してもらったとしても、次は戒名(法名)をどうするかです。宗派が違えば戒名も違います。新たに戒名をいただくとなると、その金額もたいへんなものになります。改葬先の菩提寺に、よく相談するしかないのですが、うまく話し合いがつかない場合は、2つのお墓を改葬して、宗教・宗派を問わない墓地にお墓をつくり直すことになると思います。

両家にまだお墓がない場合

両家にまだお墓がない場合は新しく建墓します。墓石は、従来は両家の家名を並列させて彫るものが見られましたが、最近はこの形が変化しています。子どもが引き継いでも、次代もまた一人っ子同士の結婚になるなどの可能性があることを考えると、墓石に家名を刻まない方式が、少子化時代には合理的なようです。

近頃多いのは、墓石には「やすらぎ」「しあわせ」「愛」「空へ」などの言葉を彫り、香炉や花立てなどに両家の家名や家紋などを入れる方法です。墓誌に両家の故人の記録(戒名、俗名、没年月日など)を記すようにしたお墓もあります。両家の宗派が違う場合でも、新しくお墓をつくる場合は、宗教・宗派を問わない墓地を選べば、めんどうな手続きは何もしないですみます。継承者は、両家墓でも連名ということはなく、原則として1名ですから、夫婦のどちらかがなります。

複数のお墓をまとめることできるの?手続きは?

同じ敷地内なら、改葬の事務手続きはいりませんが、墓石を動かすことになるので御魂抜きや開眼供養は行います。昔は個人墓、夫婦墓が一般的だったので、古くからつづくお墓では敷地内に複数の墓石が立っていることも珍しくはありません。それらの墓石をまとめる場合は、遺骨を納めるのは同じ敷地内なので、改葬許可申請書は必要ありません。作業は

①新しい墓石・墓誌を用意する。墓誌には、前の墓石に刻まれていた戒名などを、古い没年の順に刻む。

②既存のそれぞれの墓石の御魂抜きをする。

③遺骨を取り出し、骨壺に入れる。

④新しい墓石・墓誌の開眼供養をし、納骨し供養する。

の順ですが、墓地の管理者、お寺、石材店とよく相談して進めましょう。

費用は新しい墓石や墓誌の建立費、御魂抜きの法要費用、遺骨の取り出し費用、古い墓石の撤去費用、開眼供養、納骨法要の費用などがかかります。整理する墓石の数によって費用が加算されます。

お墓の継承者を断れる?

継承者は、お墓の永代使用権、仏壇、仏具などの祭祀財産を相続します。と同時に、継承したお墓が寺院境内墓地にあると、檀家としての義務も、原則として引き継ぐことになります。義務というのは、お寺の維持管理に必要な費用の負担や、法要などのことです。

もちろん断ることはできます。家族で話し合いが持たれ、きょうだいや、親戚の人が継承することになるでしょう。継承を断った場合に、遺産相続に影響するか、ということですが、法的には、祭祀財産を相続して、経済的負担が増えたとしても、法定相続分が増えることはありません。逆に、拒否あいたからといって、減ることもないのです。ただし、ご両親が特別な遺言を残した場合には、あなたが継承を断ったことが、どう影響するかはなんともいえません。

男性でないとお墓の継承者にはなれないのか?

男性が継承者になる例が多いのは、「慣習により」という理由だけなのです。今の日本では、現継承者(お墓の所有者)が、「この人を継承者にする」と指定しない限りは、次の継承者はかんしゅに従って決まります。

慣習では、戦前の家督制度の名残から、長男が継承することが圧倒的に多かっただけなのです。

現在、民法では、現継承者の指定を受ければ、男性でも女性でも、性別に関係なく、その人が祭祀財産のすべてを継承することができることになっています。

結婚して性が変わっても継承者になれる?

結婚して夫の姓を名乗ってる人でも、お墓を継承することができます。ただ、姓が同じ継承者だと手続きも簡単ですが、姓が違い、ほかに男兄弟がいたりすると、その推定相続人(一般に相続人になると思われている人)の同意書などを求める寺院もあるようです。

けれども、ますます少子化に拍車がかかる昨今、結婚して姓が変わった人でも、継承者がいれば幸運というもの。継承者の問題はこれからますます深刻なものになるでしょう。
 

お墓を継承すると相続分が減らされるの?

お墓は、相続財産とは別個の「祭祀財産」で、財産相続の対象からはずされているものです。数百万円のお墓や仏壇・仏具は価値があって立派なお墓でも、土地・建物や家具などとは違います。お墓を売って換金することはほとんどできないのです。祭祀財産は、きょうだいで分割して相続できないのでしょうか。答えはノー。原則として、継承者は一人です。これは、共同相続にして、祭祀財産が散逸するのを防ぎ、次の継承者争いが起こらないようにする昔の人の知恵なのでしょう。

生涯独身の場合、自分の死後お墓はだれが継ぐの?

新しくお墓をつくっても、独身であれば、やがて継承者がいなくなることは親もよく承知だと思います。いろいろと考えているかもしれませんので、一度親と相談してみたほうがよいでしょう。場合によっては共同墓(他人と一緒に埋葬されるお墓)がよいなどの意見がでるかもしれません。

継承者がいない悩みは、独身の人や、離婚している人だけの問題でなく、たとえ子どもがいてもお墓を継いでもらえるとは限らないのが現実です。

分骨をする

分骨をするケース

分骨とは、遺骨の一部を分けて複数のお墓に埋蔵することをいいます。分骨をするケースには、次のようなものがあります。

①遺骨を郷里の菩提寺にも納めたい

②親の遺骨を、自分が建てたお墓にも納めたい

③遺骨を宗派の本山にも納めたい。

④散骨するが、一部をお墓にも納めたい。

遺骨を宗派の本山にも納めたいと希望する人は、菩提寺に相談してみましょう。のど仏や遺髪、爪などを分骨する場合もあります。

分骨証明書を発行してもらう

すでにお墓に埋蔵されている遺骨を分骨するには、まず、そのお墓の継承者に分骨することを了承してもらう必要があります。そのお墓に関する決定権は、継承者が持っているからです。承諾が得られたら、その墓地の管理者に「分骨証明書」を発行してもらいます。分骨証明書を依頼するときには、墓地の「使用権利書」が必要です。分骨証明書を入手したら、新しいお墓に納骨する際に、その墓地の管理者に提出します。改葬のように、市区町村役所への手続きはありません。

遺骨の取り出しと宗教儀礼

改葬と同じく、墓石を動かして遺骨を取り出さなければならないので、石材店に相談し、依頼します。また、仏式では、カロートから遺骨を取り出す際に供養を行います。これは、菩提寺があればそこの住職に依頼します。

新しいお墓に納骨するときは、納骨法要を行います。

火葬の際に分骨する

あらかじめ分骨することが決まっている場合は、その旨を葬祭業者に伝えておきます。そうすれば、分骨用の骨壺を用意してくれます。一般に、納骨するには、火葬済みの印が押された「火葬許可証」が必要です。しかし、「火葬許可証」は1通しかないので、火葬場に、分骨する数だけ「火葬証明書」を発行してもらいます。「火葬証明書」の書類形式は、火葬場によって異なります。これを、分骨した遺骨を納める墓地の管理者に提出し、納骨を行います。

まとめ

お墓の引っ越し費用は、埋蔵証明(書)の手数料、カロートから遺骨を取り出し現在のお墓の墓石を供養・処分し、さら地に戻す費用、お墓を運ぶ運賃、改葬先でのお布施などがかかります。そのほかにも、郷里へ足を運ぶ交通費、宿泊費、菩提寺や親戚などへのあいさつのためのおみやげ代などがかかります。また新しくお墓を建てる際にはお墓の料金もそれに加えてかかってきます。墓地の管理者、お寺、石材店とよく相談して進めましょう。