残りの人生をよりよく生きるため、自身の葬儀や遺産相続などの準備をする「終活」。
ライフスタイルの多様化により、お墓や介護など、終末期の悩みも変化しています。
人生のエンディングを決めることは、残りの人生を豊かにするだけでなく、家族の負担軽減につながります。
今回の記事では、終活をはじめる時期やメリット、終活でやるべきことなどについて解説していきます。
終活とは
終活とは自分自身の人生の終わりを見据え、生前にさまざまな準備をすることです。
人生の終わりに向けた準備と聞くと、遺産相続や遺言書の作成などを真っ先にイメージする方も多いでしょう。実は、それ以外にも終活にはさまざまな意味があります。終活で行うべきことについては後ほど解説していくので、ぜひ参考にしてみてください。
終活は決してネガティブなものではなく、自分自身の人生を振り返ったり、家族やお世話になった人に感謝したりする機会です。とくに近年、大規模な自然災害や新型コロナウイルスの感染拡大にともない、若い人であっても身近な人の死に直面するケースが増えています。
そのため、定期的に自分自身の人生を見つめ直す機会として、終活は幅広い年代に注目されています。
終活って何をすればいいの?
終活の意味や役割は理解できたものの、具体的に何をするべきなのか分からないという方が多いのではないでしょうか。ここからは、終活で行うべきことを3つに分けてご紹介します。
生前整理
生前整理とは、自分自身が生きているうちに身の回りのものを整理しておくことを指します。たとえば自宅の中にある不用品の処分や、財産となるもの/思い出の品を分別する作業が代表的です。通常、家族が亡くなった場合は、遺族がその人の愛用品や形見の品などを整理していきます。しかし、最近では家族と離れた場所で暮らすケースも増えており、生まれ育った土地で一人暮らしをしている高齢者も少なくありません。万が一、ひとりで暮らしている方が亡くなった場合を考えてみましょう。遺品を整理をしようにも離れて暮らしていたため、何を処分すれば良いのか本人でなければ分からず、判断が難しいです。そこで生前整理をしておけば、遺された家族が行う遺品整理の負担を最小限に留められます。
整理をしたあとはメモを残しておこう
生前整理をしている段階で、古い友人や家族との思い出が詰まったものが出てくることもあるでしょう。もし思い出として家族に取っておいてほしいものや、自分の棺のなかに入れてほしいものがある場合は、それらを分かりやすくメモなどに残しておけば家族にとっても安心です。
また、生前整理は物の整理だけではなく、親しい友人や知人などにメッセージを遺しておく際にも役立ちます。自分が亡くなったことを親族以外に伝えてほしい場合もメモを残しておきましょう。親しい人々を法要に招待したり、本人からの手紙などを渡したりすることが可能になるためです。
生前整理の方法についてはこちらの記事で詳しく説明しています。
遺言書の作成
預貯金や証券、不動産などの財産がある場合、通常は民法に従って相続が行われます。遺言書がなくても相続できるため、相続人の全員が円満に遺産分割できそうであれば、遺言書は必要ありません。
しかし、本人の意思によって個別に遺産を相続したい人がいる場合や、分配の比率を変えたい場合などは遺言書を作成しましょう。
遺言書は法律上厳密な様式があり、それに沿って作成する必要があります。様式に沿っていなければ法的に認められることはなく、遺産をめぐる裁判が起こった場合でも遺言書が無効と判断されてしまいます。
親族や家族同士での遺産相続トラブルを防ぐためにも、正しい様式の遺言書を事前に作成しておきましょう。
なお遺言書の作成にあたっては、弁護士や司法書士、行政書士などからのサポートを受けられます。自分自身の判断で作成するのではなく、専門家の助言のもとで作成すると安心です。
財産目録の作成もおすすめ
そもそも相続する遺産がどの程度あるのかを家族や親族も把握していない場合は、財産目録もあわせて作成しておくのがおすすめです。財産目録とは、何の財産がどの程度存在しているのかをまとめた書類のこと。相続財産の種類や内訳、評価額などを一覧で見れるため、遺産分割の協議をする際に便利です。遺言書とは異なり財産目録には所定の様式がないため、分かりやすくまとめておくだけで問題ありません。
多額の資産が残っている場合は、生前贈与も視野に入れておきましょう。相続するよりも、税金面での優遇を受けられます。遺言書を作成する前に財産目録をまとめておき、どちらが税制面で有利になるのかを専門家に相談してみるのもおすすめです。
遺言書の作成方法についてはこちら
葬儀やお墓、遺影などの準備
自分自身の葬儀やお墓などの準備も、終活における重要な要素です。たとえば、葬儀に関しては以下の2つのパターンが考えられます。
- 自分自身の葬儀は、友人や知人なども呼んで盛大に行ってほしい方
- 家族に金銭的な負担をかけたくないとの思いから、近親者のみで行ってほしい方
希望を確実に叶えるために、葬儀社と打ち合わせのうえ、事前に葬儀の予算やプランを決めておく方もいます。
また、先祖代々のお墓がない場合や、現在の墓石が古くなり建て替えが必要な場合は、事前にお墓の準備をしておきましょう。跡継ぎとなる家族が同じお墓に入る場合は一般墓でもいいですが、子どもや配偶者がいない場合は、納骨堂や合祀墓などの選択肢もあります。
ただし、お墓を事前に準備しておく場合、難しいのが墓地の選定です。「ご遺骨が手元にある場合に限る」などの条件がある墓地もあるため、終活の段階ではお墓の確保ができないことも。とくに自治体が運営している公営墓地の場合、厳しい条件が加えられていることも多いため注意が必要です。
お墓の選び方についてはこちら
終活を行う3つのメリット
人生の終わりに向けて事前に準備することは、どのようなメリットがあるのでしょうか。今回は、3つのメリットをお伝えしていきます。
遺族の負担が減る
終活の最大の目的は、のこされた家族の負担を軽減することです。
生前整理を行っていない場合、自宅の家財や生活雑貨の整理だけで数日かかってしまうことも。そのような負担を最小限に留めるために、自分自身で可能な範囲は片付けておきましょう。
また、肉体的な負担だけではなく、心理的な負担を軽減する意味でも終活は有効です。あまりにも遺品が多いと「これは本当に処分しても良いものなのか」と判断に迷ってしまいます。元気なうちに誰でも分かるように遺品を分別しておけば、整理を素早く実行できるだけでなく、家族の迷いや罪悪感といった心理的負担を軽減できるのです。
もし体力的な問題で不用品の撤去作業が難しい場合は、最低限処分してほしいものと必要なものをラベル付けしておきましょう。この作業だけでも、遺族の負担の大きさが変わってくるはずです。
自分の思いを伝えられる
終活は自分自身の人生を振り返り、心を整理するためにも有効です。さまざまな作業や準備を進めているうちに、家族や親族、お世話になった知人などに伝えたい思いが自然と出てくるもの。終活を行うことで、誰に何を伝えれば良いのかを明確に整理でき、手紙や言葉として遺しておけます。
とくにこれまで長く暮らしてきた家族には、面と向かって気持ちを伝えることが苦手という方も多いはず。そのような場合でも、終活を通して本当に伝えるべき言葉が見つかるでしょう。
残りの人生を前向きに過ごせる
終活によって身の回りの物や自分自身の気持ちが整理されると、残された人生のなかで何をすべきかが分かってきます。家族と過ごす時間を大切にしたり、長く会っていなかった友人や知人に会いに行ったりと、時間の使い方は人それぞれです。残りの人生と向き合うことで、人生観にも少しずつ変化が見られるようになります。
終活は決してネガティブなものではなく、自分自身と向き合える貴重な機会です。終活によって大切なものが見えてきたり、ポジティブな気持ちなったりするので、ぜひ十分な時間をとって始めてみてください。
終活っていつからはじめればいいの?
終活と聞くと高齢者が行うもののように思えますが、実は30代以降の若い世代でも終活を始める事例が増えています。身近な人の死に直面したり、自分の両親が高齢になったりする年代であるため、自分自身の人生をあらためて見つめ直す方が多いようです。
終活は30代、40代であっても決して早すぎることはありません。転勤や転職、結婚など、人生の転機に応じて行うのがおすすめです。
まとめ
人によって歩んできた人生が違うように、終活にもさまざまな形があります。自分自身の年齢や家族の状況など、その人に応じた終活準備があるはずです。それぞれのスタイルにあった終活に向けて、少しずつ準備を始めてみてはいかがでしょうか。