昔とくらべて、現在のニーズに合わせ葬儀形態が変わってきました。自分たちで選ぶことがきるようになりました。葬儀のお別れの「カタチ」を知りましょう。
いろいろな葬儀のプラン
一般葬
通夜から葬儀、告別式まで2日以上かけて行うもので、文字通り、以前から執り行われてきた一般的な葬儀の形です。親族、故人の友人、知人、ご近所や会社関係者まで参列するので、規模が大きくなります。
家族葬
遺族や親族、故人と親しかった人たち少人数での葬儀を家族葬と呼びます。故人との別れをゆっくり過ごせるとして近年選ぶ人が増えています。
一日葬(主に夜間葬)
通夜と葬儀・告別式を合わせて一日で執り行うもの。主に通夜を「お葬式」として一般会葬を仰ぎ、翌日は近親者のみで火葬に赴きます。会葬者は訃報連絡の際、一日葬の形態を伝え、僧侶にも葬儀式の教義作法を夜に行ってもらいます。翌日は、出棺・火葬のみとなります。
自宅葬
自宅葬は、長年住み続けた自宅で葬儀を行うことです。これまでは自宅葬が一般的で、親戚や近所で協力して葬儀を行っていました。また式場費用がかからないので、費用も抑えられます。
直葬
遺体を自宅などで安置したあと、すぐに火葬場に搬送し、火葬を行う形。限られた遺族で見送るため費用が少なくすみ、選ぶ人が急増しています。後日、故郷で通夜葬儀を行う遺族が利用するケースもあります。
社葬・団体葬
企業や団体で功績を残した人物の場合、家族や故人の友人、知人のみで葬儀をすませたあと、会社や団体が執り行うのが一般的です。
自由葬
これまでの葬儀の形にとらわれず、故人の思いを反映し、遺族が自由に演出するタイプの葬儀。故人の好きな音楽を演奏したり、故人が好きだった花で会場を飾ったりする葬儀もあります。
宗教の形式によらない自由葬
日本では、故人の信仰にかかわらず、大勢の会葬者を迎え、仏式による葬儀が多く行われてきました。しかし、最近は形式にとらわれず、故人や遺族の思いを反映し、自由な形で行う「自由葬」が増えています。「無宗教葬」と呼ばれることもあります。自由葬は、故人の人柄や思い出にふれることのできるように、進行や演出が工夫されています。
家族や親しい人だけで行う家族葬
家族葬は、遺族・親族などを中心に行う葬儀で、基本的には「訃報連絡」を制限したものです。施行形式には決まりはありませんが、いわゆる小規模な「内々」の葬式を総称していることもあります。
最近では、「密葬」として近親者のみで葬儀を行い、後日、ホテルやレストランで「本葬」としての告別式を行うこともあります。社会的対応として、友人や同僚などが「お別れ会」や「偲ぶ会」を主宰し、自由な進行や演出で「その人らしさ」を追悼するものです。これも現代的なお葬式手法の一つです。
葬儀社と決める内容
葬儀には、儀礼だけではなく仕出しや返礼品、霊柩車の手配などさまざまな仕事があり、多くの業者が関わっています。これらをコーディネートするのが葬儀社の仕事。業者への支払いも葬儀社が行い、まとめて喪家に請求します。このように葬儀社には葬儀のほぼすべてを託すのですから、話し合いながら信頼できる業者なのか、対応や内容から伺いながら進めます。
葬儀社と検討する内容
①葬儀の日時
僧侶など宗教関係者の都合と、斎場や火葬場などの予定を考慮して日程を決定。一般的に、遺体を搬送した場所で葬儀を執り行うことが多くなります。会葬者の人数に合わせた広さの会場を選ぶことが大切です。
②葬儀のプラン・内容
本人の遺志を最優先とし、会葬者と照らし合わせながら、葬儀のプランを決めていきます。オリジナルの演出を考えているなら、可能かどうか葬儀社の担当に確認しましょう。
③葬儀の費用
各社が予算に合わせてランクの異なるプランを用意しています。内容を確認して、過不足のないものを選択。見合ったものがない場合は、オプションで追加して個性を出すことも可能です。プランを決めたら見積もりを出してもらい、検討します。
故人・遺族の希望をきちんと伝える
葬儀社の担当者と話し合う前に、遺族のなかでどのような葬儀にしたいのか決めておきましょう。あくまでも主役は故人。葬儀について本人の遺志があれば、できるかぎり希望の形に近づける努力をしたいものです。ある程度、こちらの考えがまとまっていれば、葬儀社の営業トークに惑わされずに話し合いが進められるでしょう。
なお、葬儀プラン選びで不明な点や、料金やシステムで納得いかないことなどは遠慮なく質問して、明確な答えを得るようにしましょう。
見積もりは複数社から
打ち合わせは第三者とともに
葬儀について詳細を話したからといって、即、契約しなければならないわけではありません。できれば数社の葬儀社の話を聞いて見積もりを出してもらいましょう。料金の違いだけでなく、葬儀社の対応の違いもわかります。
喪主となった人も精神的に余裕がない状態のことが多く、冷静な判断ができないことがあるので、葬儀社との打ち合わせには冷静に対処できる第三者に同席してもらいましょう。葬儀社の中には火葬場や式場の予約、暦などを理由に契約を急ぎたがるところもあります。その際「検討します」「他の葬儀社に聞いてみます」という態度で挑みましょう。
葬儀の費用を決める
葬儀の費用の内訳
日本消費者協会の調査によると、葬儀にかかる費用の総額は平均約195万円となっています。内訳は下記の通りです。
葬儀の費用は、葬儀社への支払いに加え、お経料、戎名料など僧侶に渡すお布施、そして通夜から精進落としまでの飲食・接待費、関係者への心付けなど、さまざまなものが組み合わさっています。
下記は各地区の葬儀の平均金額です。
参考元:2017年度 日本消費者協会が実施したアンケートデータより抜粋
その中でもっとも高額になるのが葬儀社に払う葬儀費用(下記①)です。葬儀社への支払いと、葬儀社が各社に注文した立替金、外注品への支払い分が含まれます。
葬儀費用の内訳
①葬儀費用(支払先:葬儀社)
祭壇・棺・火葬料金など葬儀・告別式本体にかかわる費用。返礼品、香典返しなど外注品の斎場ホール使用料や設備・人件費など。遺体搬送・保管料なども。
②お布施(支払先:僧侶)
通夜勤行・式勤行「戎名」授与、火葬場同行、炉前勤行、繰り上げ初七日勤行をお布施として包括する。このほか、御車代などの実費経費が必要。
③飲食・接待(支払先:葬儀社または料理店)
通夜ぶるまい、火葬場での軽食、葬儀後の精進落としなど地域慣例による。家族葬などの場合は内々なので少人数ならば葬儀後、自分たちで最寄りの飲食店に行くこともある。
④そのほかの出費(支払先:各所・各窓口)
親族などの宿泊や実家での接待。特別なお礼やお世話になった人への不祝儀などのお金。こまごました急なお買い物など。最近ではペットをお葬式の間、専用のホテルに預かってもらう費用も。
どんな葬儀にしたいかで変わる葬儀費用
仏式で故人を送るために最低限必要なものは、祭壇、棺、霊柩車、火葬料、収骨容器にお布施です。そのほか、葬儀を行うにはこれとは別に生花や遺影、遺体を病院から運ぶ寝台車、斎場の費用、会葬礼状、通夜ぶるまい、葬儀後の会食の費用などがかかってきます。
一方、無宗教で行うなら祭壇やお布施は必要なく、遺族だけで見送り、告別式を行わないなら、通夜ぶるまいや返礼品、会葬礼状は必要ありません。
葬儀の費用はこのようにどんな葬儀にするかということを決め、実現するために必要なオプションを付け足していくようにすれば無駄がありません。
葬儀費用のバランスを見る
葬儀の予算の見当をつけるために、執り行う側が出せる総額を決めましょう。
必要となる費用は前述したとおり、
- 葬儀社への支払い
- 僧侶へのお布施
- 飲食・接待費
が主となります。たとえば、総額予算150万円で①葬儀費用に50万円、②お布施に50万円、③飲食・接待に30万円、④その他の出費に20万円というように、葬儀費用の予算を3分の1くらいづつに割り当てると費用のバランスが取れると考えられています。
ただ、本人の遺志で祭壇を設けなかったり、告別式を行わなかったりした場合はこの3分の1の法則は当てはまりません。
お布施の額に悩んだら「仏教テレフォン相談」へ
日本消費者協会の第11回「葬儀についてのアンケート」では、「家族の葬儀を経験して困ったこと」を調査。その結果一位になったのが「心付けやお布施の額」。日頃、仏教儀礼に触れることが少ないと、悩むのは無理ありません。そんな時に相談に乗ってくれるのが、仏教相談センター「仏教テレフォン相談」。宗派を超えた活動として発足し、僧侶会員がボランティアで相談を受けています。相談は無料です。曜日ごとに宗派の異なる僧侶が対応してくれます。
仏教テレフォン相談☎03-3811-7470(土日祝。年末年始、お彼岸、お盆は休み)
葬儀の見積書を依頼する
見積書を依頼するときのポイント
葬儀の費用は、家族で話し合ってどのような葬儀にするかの方針を決め、葬儀社と打ち合わせして見積書を依頼します。依頼するポイントは下記の通りです。
<見積書依頼時に伝えること>
①どのような葬儀にするか、式場、祭壇などについても具体的に。
②会葬者のおおまかな人数。
③予算。3分の1の法則(葬儀費用の予算を3分の1くらいづつに割り当てると費用のバランスが取れる)で割り出した数字があれば伝える。
④セットを希望するならその内容を確認。
下記表は、それぞれの葬儀の相場を知る上での参考にしてください。
引用元: 第4回お葬式に関する全国調査(2020年/鎌倉新書)より
見積書をもらったときのチェックポイント
見積書は、詳細まで目を通し、わからない項目や金額があれば質問します。なお、最初の見積書で変更が出た場合、葬儀社と口頭で約束するとトラブルにつながりやすいので、修正した見積書を再提出してもらい、文書で確認することが大切です。
葬儀社が「一刻も早くスタートしないと」と迫ってくるかもしれませんが、慌てず検討して、納得のいく選択をしましょう。
見積書はここを確認!
- 高価な最上級ランクで設定されることがあるので、表示金額が「適正料金」で見積もられているかどうか。その場合、予想される追加費用はどの程度になるか。
- セットを依頼した場合、その内容の詳細を確認。不要なものがあれば、ほかの品と交換可能か。
- 飲食費は指定した人数になっているか。
- 見積書に掲載されたもの以外にかかる費用はないか。料理や返礼品が別途請求になっていることもあるので確認を。
状況に応じて追加費用が発生することも
見積書をチェックして契約しても、請求時に追加料金がかかる場合があります。それは飲食と返礼品などにかかる接待費用です。これは会葬者の数によって変わり、予定より多くの人が参列して食事や返礼品の数が増えると追加料金が加算されます。
通夜ぶるまいの料理などは、当日その場で追加できるものや、代わりに頼めるものがあるか確認して、少なめに依頼しておいて、当日状況をみて判断することも可能です。葬儀社によっては、料理や返礼品は、利用した数だけ清算する方法をとっているところもあるので、そういう業者を選ぶのも一案です。
葬儀セットプランは盛り込まれた内容の確認を
葬儀のセットプランの中には、10万円前後で葬儀ができるようにうたっているものもあります。しかし、ふたを開けてみるとその価格は、火葬のみの直葬(遺体を自宅などで安置したあと、すぐに火葬場に搬送し、火葬を行う形)だけで、実際に通夜や葬儀を行うには、オプションの追加に次ぐ追加で、結局は高額になってしまったという例も少なくありません。
葬儀社によっては利用者の目を引くために最低料金で見積もったプランで宣伝し、契約段階になると無断でランクを上げたり、オプションを盛り込んだりすることもあるので、見積もりの内容を細かく見て、不明点は問い合わせ、明快な回答が得られない場合は契約をやめましょう。
事前に用意しておきたい葬儀費用
葬儀社への支払いのほか、僧侶へのお布施や仕出し業者への代金は葬儀までに準備する必要があります。ここで注意が必要なのは、故人の預金で葬儀費用をまかなう予定の場合です。銀行は名義人が亡くなったことがわかると、口座を凍結するため、引き出しができなくなり、引き出したい場合は相続人全員の同意が必要になります。それがかなわない場合は喪主や遺族が費用を立て替えて、遺産分割協議の際に立て替え分を清算してもらうのがよいでしょう。故人が遺族を受取人にして、死亡したときに保険金が下りる生命保険に加入することで、葬儀費用にあてるケースも増えてきました。
まとめ
葬儀にかかる費用の総額は平均198万円。葬儀の形式によって費用は変わります。出来る限り、故人の希望に添った葬儀や遺族の希望が叶う葬儀にしたいですね。葬儀社への支払いのほか、僧侶へのお布施や仕出し業者への代金は葬儀までに準備する必要があります。死亡したときに保険金が下りる生命保険に加入したりと葬儀費用のための準備も大切です。